オランダリーグ「エールディヴィジ」の中堅クラブ・フィテッセ。かつて安田理大やハーフナー・マイク、太田宏介が所属し、この秋には "皇帝" 本田圭佑の移籍が発表された。
クラブカラー、ホームモデルは黄色 × 黒であるが、このクラブにはエンジ × 水色の「エアボーン(Airborne)モデル」なるスペシャルモデルが存在する。このモデルは2012-13年シーズンに初登場して以来、今シーズンで 8代目となる。
Tim Matavz(Slovenia)
2019/09/21 Eredivisie match against Fortuna Sittard at GelreDome in Arnhem The Netherlands
エンジ × 水色の組合せは、第二次世界大戦中にフィテッセの本拠アーネムにパラシュートで降下し、敵国ドイツへの侵攻を目指した「マーケットガーデン作戦」で奮闘し、多くの犠牲者を出したイギリス空軍第1空挺師団の戦闘服をモチーフにしたものとなっている。
この作戦を描いて1977年に公開された映画『遠すぎた橋(原題:A Bridge Too
Far)』で、第1空挺師団長ロイ・アーカート少将を演じたショーン・コネリーのベレー帽(エンジ)や、彼の上司である第1空挺軍副司令官、マーケット作戦司令官フレデリック・ブラウニング中将を演じたダーク・ボガードの戦闘服に配された天馬のエンブレム(水色)にその配色が確認できる。
作戦は1944年9月17日から25日にかけて行われた為、その期間に開催されるホームゲーム1試合限定で着用される。
2012 season(NIKE)
初代2012年モデルはNIKE製。折線が一部に入るストライプ。胸の中央にはイギリス空軍第1空挺師団の天馬のエンブレム。
さらに、背番号の下にも『遠すぎた橋』にかけた、 “No Bridge Too Far”(遠すぎた橋なんて存在しない)の文字が入れられている。
2013 season(NIKE)
2013年モデルはストライプが少し細くなりポロ襟となった。クラブ創設120周年の記念ロゴ「since 1892」が右胸、クラブエンブレムが胸中央に入り、空挺師団の天馬のエンブレムは左袖に配された。
2014-15 season(macron)
2014-15年シーズンからは macron がキットサプライヤーになり、水色の身頃に肩から袖にかけてエンジに切り替えられたデザイン。9月のエアボーンウィークに初投入され、作戦から70周年を記念してアウェイモデルとして通年着用された。
このモデル以降は胸にスポンサーが入った為、天馬のエンブレムは袖に配されている。背面のゼッケンの下部に「LEST WE FORGET(私たちは忘れない )」の文字が刻まれた。
2015 season(macron)
2015年モデルは再び限定モデルに。この年は水色ベースにエンジのピンストライプ。世界中のトレンドで全身同色になった。
2016 season(macron)
2016年モデルは、エンジの濃淡のシャドーのグラデーションボーダーにパンツとソックスが水色と、トレンドを押さえたデザインとなっている。「LEST WE FORGET(私たちは忘れない )」の文字は今モデルでは後ろ襟の回りに刻まれた。
2017 season(macron)
2017年モデルは、水色の濃淡のシャドーのグラデーションボーダーに、エンジのラインを入れたデザイン。クラブ創設125周年記念エンブレムがつく。「LEST WE FORGET(私たちは忘れない )」の文字は後ろ襟の回りに配されている。
2018 season(macron)
2018年モデルは、5年ぶりに太ストライプのデザイン。
2019-20 season(NIKE)
2019年モデルは、戦いが繰り広げられた1944年から75年経ったのを記念して、限定モデルではなくアウェイモデルとしてリリースされた。身頃下部に戦いの舞台となった「ジョンフロスト橋」と降下部隊の輸送機、パラシュート部隊が描かれている。
戦闘が行われた1944年にちなんで、1944枚が製作され一枚一枚シリアルナンバーが付けれれている。「LEST WE FORGET(私たちは忘れない )」の文字は後ろ襟の回りに配されている。
フィテッセのホームタウン、アーネムではこの期間、さまざまな関連イベントが行われる。激戦の舞台となったジョン・フロスト橋や街、スタジアムのあちこちでエンジ×水色の配色が見られる。
街の人々は今でも、この地で多くの犠牲者を出したイギリス第1空挺師団とポーランド第1独立パラシュート旅団をリスペクトしており、それらの退役軍人らがイベントやフィテッセの記念試合に招かれている。
試合で選手が着用した限定ユニフォームはオークションにかけられ、その収益は空挺師団に寄付される事になっている。
なお戦いの舞台となったアーネムの橋は、作戦後に連合軍の爆撃によって破壊されるが、戦争終結後速やかに架け直された。奮戦したフロスト中佐に敬意を払い、当時のままの姿で復旧した上で「ジョン・フロスト橋」と改名され現在に至っている。
現在の「ジョンフロスト橋」にその名が刻まれているジョン・フロスト中佐(右:アンソニー・ホプキンス)
(映画:遠すぎた橋より)